60代から人生をもっと充実させたい! ~ビル・パーキンス『DIE WITH ZERO』より~

~ビル・パーキンス『DIE WITH ZERO』より~

あまりにも有名な書籍です。あらためて私がここで取りあげるまでもないでしょう。でも母を長年介護した経験や60代の私自身の実感から、ぜひとも強調してお伝えしておきたいことがあります。

本書を読み、私自身しみじみと心の底からうなずいたこと。それは

「なにごとにも旬やタイミングというものがある」(チャンスは二度とこない)

「老後にそれほどお金は必要ない」(いまと同じような消費行動が続くとはかぎらない)

という2点。

この2点について、本書からの引用をもとに私自身の経験談をご紹介したいと思います。

*あくまでも60代独身女性の観点からのお話になります。その旨、ご了承ください。

目次

「いつか」なんてやって来ない

壮麗な螺旋階段の画像

母を見送るまでは、頭のなかでずっと唱えていました。

「いつか~したい。でもいまは無理だ」「とにかく老後のために節約して、お金を貯めなければ」

そしてようやく実感として悟ったのです。

このままでは「いつか」なんて絶対にやって来ない。

「いつか、いつか~」と唱えながら、いつしか時間切れになってしまう。

本書で著者はきっぱりと告げています。

 死は人を目覚めさせる。死が近づいて初めて、私たちは我に返る。先が長くないと知り、ようやく考え始めるのだ。

 自分は今までいったい何をしていたのだろう?  これ以上、先延ばしをせずに、今すぐ、本当にやりたいこと、大切なことをすべきだ、と。

ビル・パーキンス著、児島修訳『DIE WITH ZERO』(ダイヤモンド社)

私自身60代になるまでまさに先延ばし、先送りばかりの毎日でした。

母が亡くなり、ようやく自分自身の人生も先が長くないという事実を突きつけられました。それまではあえて意識しないようにしていたのです。

とにかく仕事や母の介護に忙殺されていたといえば聞こえはよいのですが、現実逃避していただけなのでしょうね(笑)。

 だが残念なことに、私たちは喜びを先送りしすぎている。

 手遅れになるまでやりたいことを我慢し、ただただ金を節約する。

 人生が無限に続くかのような気持ちで。

ビル・パーキンス著、児島修訳『DIE WITH ZERO』(ダイヤモンド社)

私たちはつい喜びや楽しみを先送りしてしまいがちです。 先に仕事をしなければいけない、そんな贅沢をしてはいけない、退職するまでは我慢だ、うんぬん……。

「~しなければいけない」と自分をがんじがらめにして、あれこれ言い訳をしながら、「いつか」のために我慢を重ねてやりたくないことをやり続ける。

まだまだ自分には時間があるという幻想を抱いているのです。

そうして自分自身にムチ打って、いったい何を目指しているのか、自分でも訳がわからなくなってしまう……。

著者はこう教えてくれます。

 大切なのは、自分が何をすれば幸せになるかを知り、その経験に惜しまず金を使うことだ。

ビル・パーキンス著、児島修訳『DIE WITH ZERO』(ダイヤモンド社)

私の場合、若いころからつねづね翻訳の仕事で成功したいと望んできました。でも振り返ってみれば、それは単に漠然とした社会的・経済的成功だったのかもしれません。

もっと大きな目的や目標があれば、そこに幸せを見いだせたのかもしれない。翻訳作業そのものは好きだったのですが、いつのまにかその喜びや幸せを失っていました。

そしていま、私はささやかな幸福感を求めて、毎日を生きています。人生とはいったいなんだったのか、60代になってもいまだにわかりません。

でも、たしかに著者が指摘するように、誰であろうといつかは寿命が尽きるのだから、その人生においてどんなにすばらしい経験をしたのか、どんなにすばらしい思い出があるのか、それこそがもっとも大切なことかもしれません。

経験や思い出の大切さ

夕暮れの草原にぽつんと建つ教会の画像

 人生の充実度を高めるのは、〝そのときどきに相応しい経験〟なのだ。

 時間と金という限りある資源を、いつ、何に使うか——。

 この重要な決断を下すことで、私たちは豊かな人生を送れるのである。

ビル・パーキンス著、児島修訳『DIE WITH ZERO』(ダイヤモンド社)

「時間と金を最大限に活かすためのカギは“タイミング”にある」と著者はいいます。

私自身、近頃、ものごとには旬やベストなタイミングというものがあると実感したばかりです。

若い頃にあれほど憧れていた都市ニューヨーク。それなのに60代で初めて訪れてみたところ、自分でも驚くほどちっとも感動しなかった……。

母がパリに憧れていた影響もあったのか、パリでのチョイ住みを夢見ていた。だが母の死後、久しぶりにパリを訪れても以前ほどの魅力を感じなかった。

物事には“旬”があるのですね。自分自身の心の変化に正直驚きました。

さらにいえば、同じ経験をするにしても自分の年齢や状況によってその経験の質は大きく変わってくるのでしょう。

母を車椅子に乗せて旅行に連れていったときのことです。母は、自分の足で立って見る景色と車椅子に座って見る景色は全然違うのだ、としみじみと語ってくれました。

人生で何を経験したいのかを真剣に考えよう。(中略)とにかく、有意義で思い出に残るものという観点から、一度きりの人生で本当に何がしたいのかを考えてみよう。
ビル・パーキンス著、児島修訳『DIE WITH ZERO』(ダイヤモンド社)

著者は「人生で一番大切な仕事は『思い出づくり』」、「人生の最後に残るのは思い出だ」と強調しています。

正直なところ、若いころならまったく同意できなかったでしょう。むしろ反発を覚えたはずです。

しかし、前述したように、60代になってみるとこう思えるようになったのです。

人はみないずれ死ぬ。ほんの一握りの人を除けば歴史に名を残すような偉業など達成できない。だから個人的に「そこそこよい人生だった」と思えるだけの経験を積みかさねてこられたなら、それでいいのではないかと。

「人生の残り時間を意識しよう」

教会の塔へとつづく階段の画像

「今の生活の質を犠牲にしてまで、老後に備えすぎるのは、大きな間違いだ」と著者はいいます。

 遠い未来の年老いた自分のために、必要以上に今の自分から経験を奪ってはいないだろうか。その金を使い切れるほど、長生きしないかもしれないのに。
ビル・パーキンス著、児島修訳『DIE WITH ZERO』(ダイヤモンド社)

 人は皆、遅かれ早かれ死ぬ。最後の数日、数カ月を生き延びるのに必要な医療費を貯めるために、人生の貴重な数年間を犠牲にしてまで働きたいと思うだろうか?
ビル・パーキンス著、児島修訳『DIE WITH ZERO』(ダイヤモンド社)

私自身、以前は老後の備えばかりを気にしていました。老後の資金を貯めることに必死でした。しかし、本書の次の指摘はずしんと胸にこたえました。

ほんの数週間の延命に大金を費やすことについて、著者はこう指摘しているのです。

「その金は、若い頃に何年、何十年も懸命に努力して稼いだ金だ。病床に伏して身動きもとれなくなった状態で過ごす数週間のために、健康で活力に満ちた時間を何年分も費やしたのだろうか?」

私自身たしかに老後の安心のためとお金を貯めてきました。

しかし、それはよりよい老人ホームに入るためや寝たきりになったときのための備えだったわけではありません。いつか「幸せな老後」を送りたいと願っていただけ。

 死について考えるのはつらいが、そうしなければ今最大限に楽しめるはずの経験を先送りにしてしまう。まるで人生最後の月に、それまで我慢してきた経験をすべて簡単に実行できるかのように。言うまでもなくそれは不可能であり、そんなふうに考えるのは完全に不合理だ。
ビル・パーキンス著、児島修訳『DIE WITH ZERO』(ダイヤモンド社)

母が亡くなることで、私はようやく次はいよいよ自分だとリアルに死を意識し始めました。

己の人生の終わりを意識するのはつらいことですが、よいきっかけを与えてもらえたと心から思います。

「高齢になるほど金を使わなくなる」

教会のステンドグラスの画像

まだ健康で体力があるうちに、金を使ったほうがいい、と著者はアドバイスしています。

 年を取れば、健康は低下し、物事への興味も薄れていく。性欲も減退するし、創造性も低下していく。かなりの高齢になり、衰弱してしまうと、できる活動は限られる。(中略)
 金から価値を引き出す能力は、年齢とともに低下していくのだ。
ビル・パーキンス著、児島修訳『DIE WITH ZERO』(ダイヤモンド社)

著者によれば、世間一般には「高齢になるほど金を使わなくなる」という考えは、あまり知られていない、とのことです。

たぶん若いうちはこのことに気づけないでしょう。

私自身60代になるまでそうでした。老後になっても出費はいまとほとんど変わらないと思いこんでいました。

しかし、母の老後を振り返ってみると、まさに75歳で倒れてからはそのとおりだったのです。

それまで母は趣味の習い事、畑仕事など毎日活動的に過ごしていました。あちこちショッピングや旅行、食事に出かけていたのです。

ところが体が不自由になってからはせいぜいデイサービスや病院に通うくらい。私といっしょに車椅子で食事に出かけることもたまにはありましたが、基本的には家でじっとしている毎日だったのです。

そして私自身60代になってみると外出の機会がめっきり減っていることに気づきました。

活動量の低下と同時に、物欲や所有欲も減っています。食事の楽しみは変わらなくてもおのずと食べる量は減ってきます。

体力や気力、意欲、好奇心、体の機能、健康、すべてが年齢とともに衰えていく。

そうなんです。残念ながら、そんなにお金を使わなくてもすむようになる。

著者は指摘しています。「あなたが考えているより、老後に金はかからない」と。

 つまり、高齢になると、金を使う機会は自ずと減っていく。だから、老後のために過度に貯蓄するのではなく、金をもっと早い段階で有効に活用することを計画すべきなのだ。

ビル・パーキンス著、児島修訳『DIE WITH ZERO』(ダイヤモンド社)

だからこそ、著者は、

私たちが一番恐れるべきは、「 80歳になったときに潤沢な資産があるか」ではない。人生と時間を無駄にしてしまうことなのだ。

と警告しているのです。

さいごに

私自身、もっと早く、せめて50代で本書に出会えていたら、と思います。

「年を取ると人は金を使わなくなる」「あなたが考えているより、老後に金はかからない」という事実に目を向け、みなさん、どうぞ喜びを先送りしすぎないようにしてください。

いましかできないことにお金を使ってください。

さいごに、著者のあとがきから引用しておきます。

 体力や気力が落ち始めるまで、人生を充実させる経験をするのを待つ理由などないはずだ。死ぬまでに使い切ることのない金を貯めることばかりに労力を注ぐのではなく、今すぐ人生を最大限に楽しもう。一生の思い出になるようなことをしよう。

ビル・パーキンス著、児島修訳『DIE WITH ZERO』(ダイヤモンド社)

 覚えておいてほしい。

 人生で一番大切なのは、思い出をつくることだ。

 さあ、今すぐに始めよう。先延ばしする理由などないのだから。

ビル・パーキンス著、児島修訳『DIE WITH ZERO』(ダイヤモンド社)

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