長年介護した母を見送ってから約2年後、2025年9月に世界一周の旅に出た。フランスとスペインが主な目的地だった。
備忘録としてここに記しておきたい。世界一周航空券の話をしてみると意外にも初耳だという反応も多かったので、どなたかのお役に立てるかもしれない。
「世界一周旅行」との出会いから計画を立てるまで

1.きっかけ――世界一周航空券って?
「世界一周航空券」を初めて知ったのは、長年勤めた語学学校をリストラされ、ある大学でアルバイトをしていた不遇の(笑)40代半ばの頃だ。大学の中国人留学生の人たちとの会話からその存在を知った。
衝撃だった。そんな航空券があったとは。
しかも聞いたところではかなりコスパのよい旅になりそうだ。
世界一周というと世界の国々を巡って長期の旅をするイメージがあった。ところが実際はもっとお手軽で簡単だった。
ぐるっと地球を一周して戻ってくればよいという。これも驚きだった。
さて、その後瞬く間に20年ほどの歳月が過ぎた。いつか、いつかと夢描きながら、母の介護や仕事を言い訳にしてまだ無理だと自分に言い聞かせていた。
いや、日々の暮らしに忙殺され世界一周旅行という夢のようなことなどすでに記憶の彼方に追いやられていたのだろう。
そんななか介護生活の終了とともに自然な流れで引退生活に入った。そうなるとお決まりの「旅にでも出ようか」という発想になる。
2.目的――世界一周旅行で何をしたいのか?
個人的にこの旅には明確な目的があった。
実はこれまで旅行会社が企画したツアーしか参加したことがなかった。
だから、すべて自分で手配した海外旅行を一度でいいから敢行してみたい、自分にもできるという達成感が欲しい。つねづねそう思っていた。
親しい友人が20代のころに単独で個人手配のイギリス旅行に出かけたことがあり、すごいなあと心から尊敬した覚えがある。
ひょっとするとそれほど大げさなことではないかもしれない。
でも私のように小心者の怖がりで、人とかかわるのが苦手な人間にとっては、国内はむろんのこと海外に自力で行く、ひとりきりで誰にも頼れない、という状況は想像するだけで怖かった。
たしかに初めての海外旅行はひょんなことからある知り合いが計画した個人旅行に欠員補充といった形で加わったことはある。
でもそれは私が計画した旅ではない。他人のプランに便乗させてもらったにすぎず、残念ながら自分にとっては窮屈なことも多く旅の醍醐味を感じるにはいたらなかった。
もうひとつには母との思い出がある。
コロナ禍以前、車いすの母を連れて海外旅行に出かけたことがあった。
それは、母が元気なころに出会ったすばらしいツアーコンダクターさんのツアーを偶然パンフレットで見つけて、さらに体が不自由であっても参加できると知ったからだった。それまでは車いすで通常のツアーに参加するのは無理だとはなからあきらめていた。
そういった経緯があって久しぶりに訪れたフランスやスペインの旅が生涯最高と言えるほど思い出深いものになったからだ。とくにフランス北西部ノルマンディー地方のエトルタとスペイン北部バスク地方のサン・セバスチャンはぜひとも再訪したかった。
母が亡くなったいま、その旅を振り返ってみよう、記憶に残る母と過ごした最高の時間を思い返してみよう、という思いもわいてきた。
いやまあ、とにかくその土地があまりにもすばらしかったので、もう一度行ってみたい、という気持ちが強かっただけかもしれないけれど。
3.世界一周航空券について
まずは世界一周航空券について簡単に紹介しておく。
世界一周航空券の基本的なルール (HIS世界一周旅行デスクより)
- 同一方向。(西回り、または東回り)へ進みます。
- 最大フライト区間数は 16区間。
- 有効期間は12か月間。
- 旅程上、飛行機での到着地と次の搭乗出発地が異なる場合、その間の区間も1フライトと見なされます。同じ都市でも空港が異なる場合も同様です。
- 途中降機の回数に制限があります。
- 全てのルート、日程を決めて発券します。
- 日程変更が可能。経路変更は条件内で変更可能です。(要手数料)
概要については主に以下のサイトを参考にした。
いずれも初心者にとってかなりわかりやすい。特にHISのモデルプランはかなり参考にさせてもらった。
旅程の決定から発券まで――初心者には手ごわいが、慣れが大事

1.スターアライアンスか、 それともワンワールドか
さて、計画を進めていこう。
手順として、
まずはアライアンスを選ぶ
世界一周航空券には、主にスターアライアンス(マイル制)とワンワールド(大陸制)によるものがあり、それぞれルールが異なる。
私の場合、JALユーザーなのでワンワールド一択となる。ここは迷わずに決定できた。
次に、
旅のプランや航空券の手配をどうするか?
旅行会社に依頼する? それとも自分で手配する?
今回の場合、すでに述べたように旅のルートや日程、航空券やホテルの予約まですべて自分でやってみたいという希望があったので、個人手配となった。
ただ、手数料が必要とはいえ旅行会社に相談するほうが失敗はなくスムーズに進むとは思う。
2.日程と訪問先をどうやって決めるか
続けて、
個人手配すると決めたら、自分でルートや日程を決定する必要がある。
ワンワールドの場合、
ワンワールド 世界一周公式サイトがある。「いますぐご予約を」というタブをクリックすると、
ワンワールド 世界一周予約ツールが表示される。

基本的にはここに訪れたい都市や日付を上から順に入力していけば、自動的にプランを作成してくれる。ルートや料金のシミュレーションができる。
ルールに合致していなければそれも指摘してくれるので、このサイトで自分なりのプランを完成できるわけだ。
慣れるまでは少々てこずったが、それでもとにかく入力を繰り返すうちになんとか形になってきた。
ところが飛行機の便を選ぶところで壁にぶつかった。日付や時間をずらしたりしてみてもだめだった。
このワンワールドのサイトでプランを完成させて予約もできるらしいのだが、希望するフライトが満席だったりと、日程などを調整してみてもなかなか希望どおりにはいかない。
このままでは計画が進まない……。
そこでJALにメールで問い合わせてみた。すると、以下のような回答を得られた。
ワンワールドWebサイトにて仮予約いただかなくても、空席があれば、弊社予約センターにて予約をいたします。また、昨今ワンワールド世界一周航空券をご利用の方が急激に増加しているため、予約が取りづらくなっている可能性がございます。
(中略)
弊社予約センターへお問い合わせいただければ、空席状況などをお調べし、ご予約に関する相談を承ります。
◆JAL国際線ご予約・ご購入・ご案内(日本地区国際線予約センター)
[JALマイレージバンク(JMB)会員の方]
03-5460-3737(東京)
営業時間:8:00-19:00(年中無休)
なお、問い合わせいただく際は、おおよその旅程を事前に組んでいただいたうえで、
連絡くださいますと、よりスムーズにご対応できるかと存じます。
つまり、ワンワールドのサイトでプランを完成できなくとも、JALに相談すれば希望する世界一周航空券を予約できるという。
そもそも発券は、最初の国際線(第1区間)を運行する加盟航空会社に依頼すればいいらしい。私の場合はJALだ。予約の変更などもすべてJALとのやりとりになる。
おおまかなプランをワンワールドのサイトで組んでみた。一部のフライトが確保できていない状態だが、あとはJALに相談するとしよう。
3.どうやって発券してもらうか
次に迷ったのが、
相談や予約を電話で行うか、それとも店舗に出向くか(2024年の時点)
当時は東京有楽町にJALプラザがあった。対面であれこれ相談できるほうがうまくいきそうだ。
それにネットで調べたところ、電話の場合はなかなかつながらずかなりの待ち時間があるらしい。そのうえつながったとしても全旅程を伝えて発券してもらうまでは数時間かかるという。
そこで東京まで出向く決意をする。ちょうどADDressで利用したい拠点もあったし、久しぶりに会いたい友人もいたからだ。
結果として、世界一周の初心者にとっては本当に助かった。その場で顔を見ながら説明を受け、質問できるのはかなりの安心感があった。
残念ながらJALプラザ有楽町は閉店してしまったので、今後また世界一周のチャンスがあったとしても電話で予約することになるのだが……。
こうして無事に発券してもらえたが、ひとつ、私の犯した大きなミスが発覚した。
ワンワールドのサイトで予約が完了できず、unvalidと表示されていた理由がわかった。
実は何回か乗り継ぎ便を利用せざるを得なかったのだが、そのせいで大陸ごとのフライト制限をオーバーしていたらしい。
JALの担当者がてきぱきと代案を考えてくれたおかげで無事に発券までこぎつけた。ただし、私の場合は訂正があったせいもあるが、かなり時間がかかると覚悟しておいたほうがよさそうだ。
座席の指定も同時に行えたので、ほっとした覚えがある。
ただし、今回はJALとイベリア航空のみの利用だったのだが、なぜかイベリア航空便は座席指定を行えず、担当者からは電話で予約してくださいとの指示を受けた。これがなかなか大変だったのだが……。
出発までのあれこれ――初心者ゆえの戸惑いや困りごと

さて無事に世界一周航空券を手にして、さらに準備を進めていくなかで戸惑ったことや困ったことがいくつかあった。以下、初心者の私が遭遇した困りごとをあげておきたい。
まず、出発が何カ月も先とはいえ、せっかちな私はイベリア航空の座席も指定しておこうと動きだした。JALの担当者からのアドバイスに従い、イベリア航空の東京オフィスに電話してみる。
先にイベリア航空のサイトから指定しようとしたのだが、予約番号を何度入力してもログインできなかった。それで仕方なくというわけだ。
これはかなり緊張した。ネットで検索してみると、日本語で対応してくれないというコメントもあったし、あまり評判がよくなかったからだ。
実際のところ、外国人スタッフも日本語で対応してくれた。対応は悪くないかもしれない。
しかし、結局、座席指定はできなかった……。指定まではこぎつけたものの最終のクレジットカードでの支払いができなかったりで、また電話をかけ直してくれという指示の繰り返し……。
とうとう邪魔くさくなってあきらめたという次第だった。
こういう経験はいままでなかったので、やはり航空会社や国によって対応がかなり違うのだなと再認識した。
日本はきちんとしていてありがたいと心から思う。だからこそお互いに期待値が上がってしまい厄介なときもあるけれど。
私は海外経験といっても短期の旅行くらいなので、海外の文化をよく知っているわけではない。だからこそ自分の常識がちょっと覆されるような体験がときには必要だと感じる。自分の常識(というものがあるなら)が通じない世界を知ることは大事だろう。
航空券の確保につづいてホテルを予約することにした。
ところが、サン・セバスチャンのホテルについては、予約を始めてから驚愕することになる。まさかの高値。なんと国際映画祭の開催時期だったとは……。
あまり深く考えずに旅行の日程を決めてしまったが、滞在費用のことを考えると大きなイベントの開催時期を避けるべきだったのかもしれない。
今後世界一周旅行の日程を決める場合、自分たちの予定を優先するべきとはいえ、現地のさまざまな大規模イベントなども先に調べておくほうが得策だろう。
これは航空券の予約時にJALのスタッフから注意されていたことだ。
出発が何カ月も先のことなのでそれまでに変更連絡がおそらくあるだろうと。ただ、私自身、あまり気に留めていなかった。
実際、さっそく変更が相次いだ。出発時刻、座席の変更など。
慣れていないせいもあるし、JALのサイトの不具合?のせいでなかなか確認できないこともあり、けっこうやきもきした。
こうした変更についても前もってきちんと想定しておくべきだったのだろう。
おわりに――ささやかな自信を私に与えてくれた旅

私は昔から臆病で引っ込み思案な人間だった。失敗が怖いから一歩踏み出せない。ほんとうに怖がりだった。
そんな自分を変えたいとつねづね思っていた。
60代になってようやくというかなり遅いスタートだったけれど、今回の世界一周旅行で少しだけ自分のなかの何かが変化したと思う。
やってみればいい。やれるうちに。いまそれがやれるなら。
こわごわやってみたら、なんとかできた。楽しめた。この経験は私にとってとても大きな意味があった。ささやかな自信にもつながった。
自分で決めて、自分で行動する。なんておもしろいのだろう。
人生が残り少なくなったから、悠長に構えていられなくなったという理由もある。体力や気力、さらに思考力もいつまで続くかわからないという不安は、若いころにはなかったものだ。
とにかくいまは時間が一番大切だと感じる。そしてそこそこの健康とお金。
思い返せば、母は若いころからずっとヨーロッパ、とくにフランスに憧れていた。かつて洋裁学校でファッションを学んだせいかもしれない。フランス語を勉強し、たしか60代に入ってから初めて海外旅行を経験し、念願のフランス旅行も実現した。
凱旋門を訪れたときの母の笑顔。それは娘の私ですら初めて目にするような若々しい心からの喜びにあふれていた。
私にもその母の血がやはり流れているのかなと思う。
旅は純粋に楽しい。いまだに臆病ではあるけれど。
この旅でたくさんの人々にお世話になった。航空会社やホテル、レストランのスタッフ、タクシーやバスのドライバー、観光案内所のスタッフなどなど。関わったすべての人々に感謝したい。
旅に出るとほんの一瞬のふれあいも心に強く残る。相手の一瞬の笑顔が脳裏に焼きついている。
JALプラザ有楽町の担当者さんにあらためて感謝したい。 カードの温かいコメントが励みになった。


最後までお読みいただきありがとうございました!
少しでもなんらかのお役に立てばうれしいです。











コメント