出版翻訳や映像翻訳を目指す方に。スクール選び、仕事選びに戦略を!(下)

出版翻訳や映像翻訳を 目指すなら、 スクール選び、仕事選びに戦略を!(下)
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出版不況…

私が出版翻訳に携わるようになった20年ほど前から、すでに出版不況が叫ばれていました。新刊点数が増える一方、1タイトルあたりの発行部数は大きく減少しています。つまり、印税方式(本の定価×部数×印税率)で報酬を受け取る翻訳者にとって、部数が減ってしまうと、同じ労力に対して受け取れる対価が減ってしまいます。

どの業界も同じですが、やはり出版翻訳の世界もデフレ化が進み、フリーランスで生計を立てるのは厳しくなってきました。収入を増やすためには仕事量をどんどん増やすしかない、と自分を追いこんでしまいかねません。

さらに出版翻訳の場合、仕事の依頼から翻訳の完了、報酬の振込みまで1年近くかかることもあります。そして、出版社さんとのお仕事はわりあいのんびりしたところもありまして、最近ではさすがに契約書を交わすとはいえ、その時期は仕事がほぼ終わるころというケースも多いです。

残念なことに依頼を受けたときの話とは違い、いざ出版となると初版部数が減ってしまうことも最近は多々あります。というわけで収入の予測がつきにくいのも、出版翻訳のつらいところです。

私自身はまだ利用していませんが、最近はクラウドソーシングで直接案件を受注するケースも増えており、その場合は単価がさらに低下しているとも聞いています。厳しい競争にもさらされ、翻訳者にとってはますますキツい状況になっているのでしょう。

新人翻訳者にとってはチャンスも!

もちろん、出版不況も翻訳者にとってデメリットばかりではなく、メリットもあります。新刊点数が増加するということは、すなわち翻訳者にとって仕事のチャンスや異なる分野の翻訳にチャレンジする機会が増えることでもあります。新人にとってもチャンスがつかみやすいでしょう。

私自身、その恩恵を受けたと思います。大昔はそれこそ大御所の翻訳家や副業で翻訳をされる大学教授の方々しか活躍していないように感じていたからです。たぶん、新刊点数が増えたからこそ、編集者さんも新人翻訳者を発掘し、仕事を依頼するようになったはずです。条件的には厳しい面も多いのですが、出版不況を逆手にとってぜひチャンスを手に入れてください。

今後長く翻訳を続けていくためには実力アップとともに、まずどうやって仕事のチャンスをつかみ、どこからどのように仕事を受注していくか、戦略が必要かもしれません。

ちょっと昔のやり方っぽいとは思うのですが、出版翻訳であればスクールに通い、翻訳家として活躍中の講師から下訳などの仕事を受ける、そうして実績を積んでから編集者さんに紹介してもらう、という形がいいように思います。結局、翻訳の実力は簡単にはかれるものではないので、やはり発注者からすれば新人を起用するのはリスクがある。となると、誰か信頼できる翻訳者からの紹介というのが一番安心できるのかもしれません。やはり人脈が大事かと思います。

私自身が受講したのは「実務翻訳」「出版翻訳」「映像翻訳」を全てラインナップしているフェロー・アカデミーという翻訳の専門スクールです。通学講座と通信講座の両方があり、高い専門性が身につくカリキュラムが用意されているため、お勧めです。私の場合、通信講座を受講し、最終的に講師の先生から下訳のお仕事をご紹介いただけました。

長い翻訳人生を送るために

開かれた本と花や猫のシルエット

いくら夢や熱意があって、実力も備わっていても、あまりにも条件の悪い仕事ばかりだと疲弊する一方です。とくに現在は翻訳をとりまく環境もいぜんよりもかなり厳しくなっています。だからこそ、フリーランスの出版翻訳者を目指すなら、仕事そのものはもちろん、報酬や条件、自分の目標に合うかなど、総合的に判断して受注してほしいと思います。その観点からスクール選び、講師選びも考えてみてください。

新人の場合、たしかに仕事を選ぶのは難しいと思います。私も、1回断ると次のチャンスがない、という強迫観念にとらわれ、馬車馬のように働いた(笑)ころもあります。

しかし、厳しい時代だからこそ、長い人生、できるだけ長期にわたって翻訳の仕事を続け、そして、せっかく好きだった翻訳作業を嫌いになることのないように、できれば楽しく働けるようにご自分なりに戦略を練っていただければと思います。

出版業界の慣行や出版流通の仕組みについては、私自身、橘玲さんの『新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ』(「出版流通の仕組みはどうなっているのか」「出版社と取次の利害対立」「新刊点数が増える理由」の章)を読んで、なるほどと納得した覚えがあります。なんとなく変だと感じていたことが具体的にわかりやすく説明されていましたので、ここであわせてご紹介しておきます。

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