はじめに
私はそもそも人付き合いが苦手で、どちらかといえば独りでいるほうが好きなタイプです。若い頃は英語講師もしていましたが、フリーランスとして在宅での翻訳業に専念してからのほうが自分にしっくりくるように感じていました。
そんな私が母に代わって築古アパートの管理をすることになり、すでに10年以上が経ちましたが、いまだに迷うことや悩むこと、困ることがしょっちゅうあります。
振り返ってみれば、祖父が建てたアパートのおかげで父が亡くなったあとも暮らしに困ることはなかったので、家賃収入の存在はありがたいと心から感謝しています。ですから若い人たちが将来のことを考えて不動産投資を検討するのはよいことではないかと考えます(もちろん、しっかり勉強してからというのは大前提ですが)。
ただ、私たちは昔のやり方でいまも自主管理を続けていますのでそれなりの苦労もあります。そのあたりについて本音を語っていきたいと思います。アパート経営で自主管理を検討している方々にとって多少なりとも参考になれば幸いです。
ただし、地方で長年にわたって、副業で、築古の木造アパートを自主管理しているケースとしてご理解ください。そもそもみずから不動産投資に乗り出すようなタイプではなかった人間がひょんなことからアパート経営をすることになったケースとしてお考えください。
副業としての賃貸アパート自主管理で感じたこと5選
1.休日というものは基本的にない
管理会社に任さず自主管理するのであれば、入居者からの連絡は(不動産会社を通しての場合もありますが)直接大家に入ってきます。なんらかのトラブルや苦情、住宅設備の修理など。
私の実感としてはどういうわけか土日祝日に連絡が入ることが多い気がします。入居者は仕事が休みの日になって、そうだ、大家に連絡しなきゃ、となるのだとは思います。
ただ、こちらとしては土日や祝日だと、いつもお世話になっている工務店さんなどに緊急に駆けつけてもらいにくいという事情もありまして……。
とにかく住宅関連のトラブルは急を要する場合も多く、つねに対応できるようにしておく必要があります。よって会社勤めの場合と異なり、決まった休みをとるのは難しいといえます。
私の場合、基本的にはいつでも連絡可能にして、なるべく早急に対応するようにしている。でも自分なりに休日を決めるなりしてストレスをためないようにするのがよいかもしれない。信頼できる工務店さんなどがいれば、たいていの場合はすぐに対応してもらえるので、自分が動けない場合も電話一本で事足りる。
2.生活全般に関わるあらゆるトラブルに対応することに
生活しているとさまざまな問題に遭遇するものですが、賃貸住宅の自主管理では入居者さんの数だけいろいろなケースがありまして、当初はけっこうメンタル的にもやられました。
家賃滞納、違法駐車、ゴミの不法投棄、敷地内での野良猫へのエサやりなどの迷惑行為、(入居者同士の、あるいは外部との)騒音の問題、害虫による被害などなど。以前台風でかなりの被害を受けた際も、入居者さんとの話し合いや交渉、保険会社への請求などを含めて修理や事後処理が大変でした。
なかでも家賃滞納がやはり一番厄介ですね。身もふたもない話ですが、「お金がない」と主張されたら大家としてはどうしようもなく、そこをなんとか少しずつでも回収できるように粘り強く交渉せねばなりません。なるべくそれぞれの事情に寄り添って配慮しようとはしています。
入居者の話をよく聞く。何に困っているのか、なぜそうなるのかを理解して、なるべく寄り添った形で解決策を探る。双方にとってウインウインとなる方法を見つけようとする。あくまで理想としてはではあるが。
3.答えのない問題もあり、対応に苦慮するケースが多い
たとえば簡単な修理であれば、入居者からの連絡に応じてしかるべき業者に連絡して対応してもらえばいい。それだけのことではありますが、その際もまず大家が全面的に負担すべきケースなのか、負担するならどの程度の費用をかけるのか、どの業者に依頼するのが適切なのか等々検討する必要があります。
修理ならまだよいのですが、騒音問題などは個人の感じ方によって問題の度合いが違ってきますし、当事者双方の主張が食い違ったりすると解決するのはなかなか難しい。また敷地内での違法駐車については、警察は民事不介入なので基本的にあまり頼ることはできません。
想定外のケースもあるので、その都度ネットで検索するなり専門家に助けを請うなりして解決法を探すことになります。
ひとりで悩まず、大家の会に入って仲間を見つけ、知恵を拝借するなど。ネットには先輩大家さんたちのブログも多いので参考になる。
4.会社員だった人間からすると、ちょっと???な人にも遭遇する
あくまで私のケースではありますが、アパートで10室あればその1割くらいでトラブルが発生するような印象がありまして、たとえば家賃滞納といった厄介なことが起こります。
割合としては低いのですが、そうした問題を引き起こす入居者はけっこうクセのある人が多く、対応に苦慮します。例をあげると、家賃を催促しても、常習犯の入居者はほんとにうまく逃げるんです。いついつなら払うからと平然とウソをついたり、他にも支払いがあるからそちらを優先するつもりだと開き直られたり。
相手が困っているなら、こちらとしても相談に応じたいと思うのですが、たいていは事情を説明してくれず、なにかと言い訳をして逃げるばかり。逆ギレされ、電話で怒鳴りつけられたこともありました。
私がこれまで仕事で関わってきた人たちとはあまりにも違いすぎて、どのようにつきあっていけばいいのか、ほとほと困りました。私自身、超真面目な性格なので、やり方がまずかったのではないかと反省してもいるのですが……。
ごみ処理などについても、こちらがいくら注意書きを貼ってもルールを守ってもらえず、困ったことも。これはどんな組織でもよくあることでしょうが、関わる人数が多くなればなるほどいろいろな人が集まってくるので、ルールを守らない人やマナー違反の人も増えてきます。人をまとめるというのは難しいものです。
ただ、私自身、母の介護を経験し、また年齢を経て気づいたこともあります。たとえばゴミ出しのルールなどやや複雑になってくると理解できないお年寄りもいるのではないかと。ネットで調べられない人もいるのかも。私の母もそうでしたが、高齢になると、もしくは脳卒中などの後遺症のせいで、認知機能が低下してくる場合もあるのです。
実のところ、認知症を発症した入居者も何人かいました。被害妄想にとらわれ、なにやら不可解な訴えをしてくるケースも。
自分の常識や経験、考えに縛られすぎず、さまざまな経済状況や価値観の人たちがいると考えて、そのつど柔軟に対処していくことが大事。わかりあうのは難しいとしても、想像力を働かせて相手の状況をなるべく理解するようにしたい。
5.結局は人対人の問題、コミュニケーションが大事
私は他人から好かれたい気持ちが強く、何か頼まれると断れないタイプ。だからこそ賃貸住宅の管理業務は精神的にもなかなかきつかったです。
入居者は十人十色で、要望、主義主張もそれぞれ異なります。その都度、家主としてどこまで対応するか、どこまで費用を負担するべきか悩みながらも、ついついいい顔をしてしまい、あとから費用がかさんで後悔することも一度ならずありました。
その意味でもコミュニケーション力、交渉力を鍛える必要があるかもしれません。
ただ、昔ながらの大家さんにはけっこう世話焼きの人が多いのではないかと思います。私自身、一人暮らしのお年寄りがいるときはけっこう気配りしていました。こちらでできることはなるべくお手伝いしたものです。
人が好き、人とのコミュニケーションが好き、という人ならよい大家さんになれる素質があるのではないかと個人的に思います。ビジネスとはいえ、結局は人間が相手であり、入居者たちに快適に住んでもらえるようにあれこれ配慮するのが仕事ですから。
私自身はなかなかその境地にまでは達せなかったのですが(笑)。
自分の性格や許容度などを考慮して、ムリせず管理会社に任せることも選択肢のひとつ。ただ、不動産賃貸業を始めるなら、大家さんとしてしばらく自主管理してみるのもかなり勉強になるのでよいと思う。
さいごに
こうして自分の思いをつづりながら、もしやこれは最近ではかなりレアケースであって、たいていは大家業を始める覚悟のできた人ばかりなのではないか、と不安になってきました。ダメダメ大家の経験ばかり書き連ねてしまったのではないかと……。
時代は急速に変化しています。昭和初期には地主さんが賃貸住宅を建てて自主管理しているケースも多かったものですが、近頃、大家の会などに出席すると、不動産投資として大家業を始める人が多いという印象を受けます。そうやって覚悟を決めて大家になった人たちからすれば、私なんぞなんとも甘っちょろいとお叱りを受ける気もしますね。
でもここでは恥ずかしいことも正直に書くと決めたので、本音を語らせてもらいました。なんらかの形でご参考になればうれしいです。
まぁ、こんなに甘っちょろい大家でもなんとかがんばってこられたということで、みなさんには自信をもっていただけたら(笑)。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
楽しく大家業を続けてくださいね。
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