還暦を過ぎてもなお人間関係に悩んでばかりだった。
特にここ十数年、母が脳出血で倒れて以後、代理として借家の管理・不動産関連・町内のことなど家の仕事全般を一手に担うようになってから、対人関係にかなり頭を悩ませるようになっていた。
英語や翻訳関連の仕事のみに関わっていたときは、そこまで人間関係に悩んだり困ったりしていなかった気がする……。
家の仕事は、いずれも自分が長らく慣れ親しんでいた業界とはかけ離れたものばかり。それらを独力でこなすはめになったからだろう。
あらたにおつきあいすることになったのは、不動産屋さん、工務店などの業者さん、税理士さん、借家の人たち、町内会の人たち、などなど。
そして「どうも通じない」「どうしてもわかってもらえない」という悩みが始まった。
「話せばわかる」なんて幻想だったのか……

しかし、ようやく気づいた。あれから十年以上経ち、いまになってやっと……。
そもそも無理だったんだ。通じない人にはどうやっても通じないのだと。
いくら努力しても伝わらない、通じない。
同じ人間とはいえ、相手と自分ははなから違いすぎたのだろう。
基本的な考え方、感じ方、こうしてほしい、こうしてくれたらうれしい、という感覚、前提条件すらまったく異なるのだ。
だから、いくら言葉で説明しても通じない。こちらが何を求めているのか、相手には見当もつかない。相手の反応や返答も私にとっては一瞬「えっ?」と戸惑ってしまうものが多い。
話せばわかる。通じる。わかってもらえるはず。理解してもらえないのは、私のコミュニケーション・スキルが不足しているから。そう思いこんでいた。
だからこそ、どうしたら伝わるのか、と悩みまくっていた。
でも、その大前提こそが大間違いだった。
通じない相手には通じない。いくら努力してもむなしいだけ。
であれば、最初から話がそこそこ通じる相手をまず選ぶほうが正解だろう。そのほうが圧倒的にお互いにストレスがかからない。
相性のよくない相手にはどうやっても伝わらないのか……

私がここ数年人間関係に悩んだ相手。ひとりは不動産会社の人。
最初に私がどういう人間か、どういうことを望んでいるかを伝えたつもりだった。でも、私にとって連絡がほしいときには連絡がこない。理由を教えてほしいときには教えてくれない。尋ねても納得のいく答えは返ってこない。
もちろん、基本的な仕事はきちんとしてくれるのだけれど……。いまひとつ、こちらの不安や心配に寄り添う気持ちがまったくないというか。たぶん、そんなことは想像もつかないのかもしれない。
もうひとり、税理士の先生。
とても誠実で真面目な方なのだが、私の意図がまったく伝わらないし、私からすれば相手からの返事をまったく理解できない。そもそも立場が違うせいかもしれないが……。
以前、節税になるならと、青色申告の65万円の特別控除について尋ねたことがあった。すると先生は「帳簿をつけていないから適用されませんね」と即答。会話はそこで終わり。
それ以上は詳しく聞けそうになかった。こちらの意図に気づいて「~すれば控除を受けられますよ」という補足説明はなかった。
くどいようだが、もうひとつ直近のエピソードもある。これは私が今回の悟り?を得るきっかけにもなった。
今年の確定申告で、税理士報酬の請求額が例年よりもいきなり高額になっていた。料金改定の話など聞いていなかったので問い合わせてみた。
値上げは仕方のないことだが、せめて先に伝えて欲しかったと訴えてみる。ところが「なるほど。でも料金については実際にやってみるまでわからないこともあるんですよ」という返答。
いやそういう話じゃなくて……。値上げのお知らせはもちろんのこと、料金ってそもそも目安や概算を先に教えてくれるものじゃないですか、終わってからいくらになりますっておかしくないですか、と訴えてもちっとも伝わらず……。
私が愚かだった(笑)。
そもそもわかりあえない相手に対して、わかってくれない、伝わらないと嘆いていたのか……。
最初から間違っていた。
なんで伝わらない、わかってもらえないのか、と悩む必要なんてまったくなかったのだ。
伝わる相手には伝わる。伝わらない相手にはどうやっても伝わらない。それだけのこと。
だからこそ相手を選ばなければ。お互いに相性はどうか、通じあう部分があるか、話が合うか、一方通行になっていないか。そこを見極めてからでないと。
とはいえ、これは業者さんや専門家とのおつきあいのこと。
その人のことが好きだ、理解したいと思うなら、わかりあうのが難しい相手でも努力すればいいと思う。
業者さんなどとの関係においては、信頼関係が築けるかどうか、この人なら信用して任せられると判断できるかどうか、そこを最初によく考えたい。
一番大切なのは他人じゃなくて自分自身だったのか……

同時に気づいたことがある。
私は他人ばかり優先していた。他人とうまくやっていきたい、他人から好かれたい、と。
友人に対してもそうだ。
みんな元気にしているのかな、(つらい状況にある友人には)なにか支えになれないかな、助けになれないかな、とよく心配していた。
でもみんなそれぞれ家族も友人もいる。なによりも本人がちゃんと自立した大人なのだ。
私はもっと友人たちを信頼するべきだった。それに、ひょっとすると、私がもっとも孤独な人間なのかもしれない。
自分こそ大切に守ってあげるべきだ。自分を一番に考えよう。
そう心がけておくほうが、他人とももっとうまくつきあえるはず。
他人にわかってもらおうとするのは、もうやめよう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
なんだか悩む必要のないことでずっと悩んできたんだなぁと
しみじみ思いますが、これからは少し楽に生きていけそうです(笑)。
どなたかのお役に立てばうれしいです!












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