出版翻訳家になるには ~私の経験を振り返って(下)コンテスト・トライアル編~

出版翻訳家になるには ~私の経験を振り返って(下)~

出版翻訳家になりたいけれど、具体的にどうすればよいのかわからない……。勉強をしているけれど、どうやって仕事につなげていけば……。

そんな悩みを解決する一助となることを願って、今回は翻訳コンテストやトライアルについて私の経験談をお話しします。

翻訳者ネットワーク「アメリア」からリーディングの仕事を初めて獲得した件については、下記をご覧ください。

翻訳スクールをお勧めする理由やフェローアカデミーでの経験談については、下記をご覧ください。

目次

幸運に恵まれたトライアル案件

机の上に置かれた何冊もの本やコーヒーカップ

今回の経験談は、私の20年以上にわたる翻訳者人生のなかでも、めったにない(笑)幸運に恵まれた充実感にあふれたコンテスト/トライアル&お仕事のエピソードになります。

数え切れないほどコンテストやトライアル、求人に応募してきましたが、まず合格率が低いうえに(笑)、せっかく仕事につながっても(自分の実力不足も含めて)不本意な結果に終わることもありました。いやむしろ、もやもやした感じで終了というケースのほうが多かったかも。

私のような凡人でも10年くらい努力を続けていると、こうして僥倖に巡りあうこともあります。ですから、いま翻訳者を目指して奮闘中の方々にも、あきらめずにチャレンジし続けてほしいと思います。

コンテストやトライアルに落ちても、めげないで努力し続けよう。いやむしろ一発合格するほうが稀だと考えて、とにかくチャレンジすることが大事。

翻訳者ネットワーク「アメリア」からのトライアル情報

ことのはじまりは翻訳者ネットワーク「アメリア」から、出版クラウン会員に送られてきたトライアルの案内メールでした。

ある出版社がアニメ映画の関連本3冊を手がけることになったんです。しかし、同時に3人の翻訳者が必要であり、さらに映画の公開日にあわせるために日程が厳しいとあって、アメリアで翻訳者を募集したそうです。

スクリプトブックなど3冊のうち、私はアニメ小説版のトライアルに参加することにしました。

子ども向けアニメ映画のノベライズ翻訳にはコツがある

出版翻訳の実務経験のない方々は、原書どおりに翻訳するのが正道だとお考えかと思います。たとえば小説の翻訳で、原文を大きく変えたり、勝手に加筆したりするのはおそらく厳禁でしょう。

ところが、子ども向けアニメ映画のノベライズ版の翻訳となると、原書はかなり短く、文章も簡潔であっさりしたものが多いんです。これは日本語と英語の特性が違うので仕方がないのですが、原文どおりに忠実に訳すと、日本語の読み物としてはなんだか味気なく、魅力がなくなってしまいます。

そのためトライアルの時点で、担当編集者さんから「ストーリーをふくらませて訳してください」との指示がありました。ところが、トライアルの時点では、もちろん映画本編を見ることはできず、情報は限られていました。

そこで、私がとったトライアル対策は、

  • 映画の公式サイトで予告編を何度も見てイメージをふくらませる
  • 日本語の読み物としておもしろくする
  • 読者である子どもたちにわかりやすいように、必要に応じて加筆し、表現を工夫する
  • 読者が想像力をふくらませることができるようにする

おそらくこうした対策が功を奏して、合格できたのだと思います。

ただし、実はこれには裏話がありまして、私が子ども向けアニメのノベライズに挑戦するのは2回目だったんです。前回は初めての経験とあって100%満足のいく仕事にはならず、忸怩たる思いがありました。だからこそノベライズに再挑戦したかった。

前回の失敗から学んでいたからこそ、トライアルに合格できたことは間違いありません。どんな経験もきっと自分の糧となるはず。がんばりましょう。

失敗も含めて経験は大きな財産になる。次のトライアルや仕事にきっと生かせるはず。

翻訳トライアルに合格するためのポイント

トライアルの種類や特徴によって合格のためのポイントは多少異なるとは思いますが、基本的には以下のような点に気をつけるとよいでしょう。実際に翻訳の仕事を受ける場合も同じです。

  • 課題(内容や作者の情報など)について事前にできるだけ情報を入手する
  • 読者ターゲット(年齢層など)をしっかりと見据えて訳す
  • 物語のメッセージを伝える役割を意識する
  • 翻訳力のみならず日本語の豊かな表現力が大切

トライアルやコンテストでは出版社の担当者にあまり質問や問い合わせができないと思いますが、仕事の場合は編集者さんにきっちりと確かめたうえで翻訳作業にかかるほうがよいでしょう。

トライアルの趣旨、課題のジャンルやストーリー、対象となる読者層などをきちんと把握してから、翻訳作業にかかること。

さらなる仕事のチャンスが訪れるという幸運も

机の上に開かれた本とその上に置かれたピンク色の花

ノベライズ本の翻訳は、私にとって2度目のチャンスであり、前回の反省点を踏まえて、担当編集者さんの要望にうまく応えられたのではないかと思います。

私自身、原文を理解して想像力をふくらませ、必要に応じて加筆したりやさしく表現したりしながら日本語の読み物に仕上げていくのが楽しかったですね。通常の翻訳作業と違って難しい面もありますが、とてもやりがいがありました。

自分自身、達成感のある、満足のいく仕事になったことがなによりうれしかったです。

幸運が続くこともあるもので、その後、同じ出版社からまた別のノベライズのお仕事をいただき、さらにはついに念願が叶って、小説の翻訳の依頼を受けることになりました。あのときの喜びはいまだによく覚えています。

ひとつの仕事が次の仕事につながることが多い。人脈を通じてチャンスが巡ってくることもある。トライアルや仕事をひとつずつしっかりこなしていこう。

悩みは尽きないけれど、とにかくチャレンジし続けよう

机の上にある開かれた本と眼鏡、淡い色の花

コンテストやトライアルについては、恥ずかしながら私自身あまり立派な合格体験がなく、お伝えできる情報が少なかったかもしれません。私の場合は細々と勉強や仕事を続けるうちに、先生や編集者さんの紹介で次のチャンスにつながっていったというところです。

出版翻訳に関わってから10年目くらいにようやく収入も安定してきました。10年続けたらなんとかなるものだな~と思っていたのですが、やはり仕事量には波があって、その後またまた収入は落ち込んだのでした……。

フリーランスの翻訳者はいろいろ悩みが尽きませんね。でも、長く努力を続けていると幸運が巡ってくるものだなと心から思います。

出版翻訳を目指して学習中の方、仕事獲得に向けて努力している方にとって、今回の情報が少しでもお役に立てば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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