翻訳の分野について、選択に迷っていませんか?
翻訳の分野は、ざっくり分けると「実務/産業」「出版(フィクション、ノンフィクション)」「映像(ドラマ、映画など)」の3つになるかと思います。翻訳を仕事にしようと決めるきっかけは、人によってそれぞれ違います。最初から自分の専門分野がある方もいらっしゃるでしょう。でも、特にこれといった専門分野がない場合、どうやって目指す分野を決めるのでしょう?
どんな仕事選びでも同じですが、夢を抱いて、「好き」「興味がある」「やってみたい」という気持ち優先でいくか、現実路線で、「適性」「学歴」「経歴」「収入」といった条件から絞っていくか。みなさん、一度は迷われたことがあるのではないでしょうか?
翻訳の世界では、報酬の面ではやはり実務が有利ではないかと思います。仕事の量や幅など一番すそ野が広いでしょう。世の中全般にそうですが、エンタメ系のほうがどうしても門戸が狭く、競争が厳しいのではないでしょうか? たぶん、エンタメ系のほうが「好き」という感情を抱いている人が多く、「楽しそう」という印象もあるからかもしれません。
私は実務からスタート。でも、出版をあきらめきれず…。
私の場合、子供の頃から読書が大好きだったので、やはり小説の翻訳に憧れがありました。もう少し大きくなると外国の映画やドラマも大好きになり、字幕翻訳への憧れも抱きました。
おわかりかもしれませんが、私はともすれば夢見がちで、行動力のない、ぼんやりとした憧れだけを抱いて満足しているような人間でした。たぶん、本気で夢を叶えようという覚悟はなかったのでしょうね…。
そんなわけで私はどんどん迷走しはじめます(笑)。私が20代の頃はインターネットもメールもない時代ですから、出版翻訳や映像翻訳を目指すなら東京に行くしかなかったわけです。そんな度胸や覚悟があるくらいなら、今頃もっと違う人生を送っていたことでしょう。当時、地方でとりあえず英語の仕事といえば「通訳・翻訳(実務)」ということで、地元の通訳翻訳スクールに通いました。
どうも私は計画性がなく、そのときの「好き」「やってみたい」で人生の選択をしがちでしたので、内向的な性格なのに通訳コースに進んでしまいます。通訳業も数年、経験しましたが、やはり無理がたたって、ついに脱落…。そこからはいったん特許翻訳の世界に足を踏み入れることになりました。
その後は英語講師を長年務め、収入もある程度は安定していたのですが、30代後半になってかつての夢や憧れが胸の奥でうずきだしました(笑)。そして一念発起して勉強再開、仕事のチャンスをつかむ、という道をたどりました。昔とは違い、インターネットの発達により地方在住でも出版翻訳者になるチャンスが生まれていたんです。そこが私にとって最大の成功要因でした。
ご参考までに、私が選んだスクールはこちらです。
翻訳の3大分野「実務翻訳」「出版翻訳」「映像翻訳」を全てラインナップしているスクールで、こちらの通信講座で出版翻訳を学びました。
どちらも正解。転向も可能。長期的な視点から自分で決めよう!
「好き」を貫くほうが楽しい反面、チャンスをつかみにくく経済的にもあまり恵まれない、というのが実情でしょう。最終的にどちらを目指すかは自分次第。自分が納得のいく決断をできれば、それでよいはず。
ただ、自分の夢や可能性に賭けるほうが、なんとなくカッコいいように昔は思っていましたが、自分が人生に何を望むかによって、現実的な条件から判断するのも「正しい」と今ならわかります。たとえば、翻訳業よりも講師業のほうが自分にとって比較的楽にこなせて、そのうえ周囲からの評価も高い、というケースもあります。自分にそもそも適性があり、競争力があると判断できる分野に特化するという戦略もアリです。
ひとつの分野での成功を足がかりにして、自分が心から好きな分野に転向するという戦略もあるでしょう。私自身には長期的な視点がなく、けっこう行き当たりばったりに進んでしまい、人生の貴重な時間を浪費した、という思いもあります。まあ、いろいろ経験できておもしろかったとも言えますが…。
ですので、今、迷ってらっしゃるなら、ぜひ長期的な視点から、じっくり計画を立てていただきたいと思います。初めのうちはチャンスをつかめず食べていけなくても「好き」でいくか、それとも「適性」「安定性」などからまずは実務経験を積んでみるか。
もうひとつだけ、これも私が後悔している点なのですが、翻訳の仕事もどんな分野であれ、一度経験してみないと「合う」「合わない」は実感としてわからないと思います。ですので、可能であれば興味のある分野の仕事をまずはやってみる、そのうえで継続が可能かどうか、冷静に判断すればよいのではないかと。
最初はキツくても無理しなきゃ、仕事をもらわなきゃ、と我慢を重ねすぎると、やがて「もう限界」となりかねません。「好き」が「嫌い」になっては元も子もない。それぞれにいろんな事情があるとは思いますが、みなさま、くれぐれも無理をしすぎないようにしてくださいね。
やっぱり合わなければ、すぐに路線変更したっていいんです。結局、三日坊主に終わっても、べつに恥ずかしくありません。自分の人生ですから、自分にとってベストな状態になるようにどんどん変わっていっていいんです。
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