翻訳学校で講師から評価されない? どうしたら?
出版翻訳者を目指して学習中のみなさま、「スクールに通っているけれど、担当講師からあまり評価されていない」と感じたことはありませんか?
たまたま今回の課題は調子がよくなかったから、というなら気にする必要はないでしょう。でも毎回、他の生徒さんは褒められるのに自分だけは厳しい言葉しかもらっていない、そんな風に感じていたら、落ち込みますよね。「やっぱり私には才能がないんだ」「翻訳なんて無理かも」と自信を失ってしまいます。
私もそうでした。離婚後30代半ばで、英語講師をしながら地元の翻訳スクールに通いはじめました。いつか出版翻訳に関わりたいと願っていたからです。ロマンスの分野でなんらかの翻訳賞を受賞したという先生に教わったのですが、講義形式の授業で、小説を訳す心構えなど理論的なお話を多く伺えました。ただ訳例は配布されず、生徒全員の訳とそれに対する先生のコメントから、自分なりによい訳を導き出すようにと指示されていました。
飲み込みのよくない私は、なかなかコツがつかめず、かなり苦労しました。それまで特許翻訳など、実務系の英語ばかりに携わっていたせいで、分野の大きく異なる出版系の翻訳にてこずったせいもあるでしょう。
先生からはさんざんな言われようでした(笑)。「あなたの文章は小説の文章になっていない」「小説を読んでいない人の文章だ」「小説の翻訳のなんたるかがわかっていない」
他の生徒さんはけっこう褒められていたので、ますます落ち込みました。でも、訳例はなく、添削してもらえるわけでもなかったため、自分なりに改善しようにもイマイチ方向性がわからず、右往左往するばかりでした。
起死回生の一手?
かなりやさぐれてきていて、このままではいけないと思いました。そこでそのスクールはいったんやめることにして、東京の翻訳スクール フェロー・アカデミー の通信講座を受講することに決めました。私の希望する分野(ホラーやファンタジー)で活躍中の翻訳者の先生を選びました。
するとどうでしょう? 評価がころっと百八十度変わったのです。ほんとうに驚きました。丁寧に添削してくださるうえに、もちろん訳例も用意してもらえました。疑問点も質疑応答で解決されます。「小説の文章になってないことはないですよ」と言ってくださいました(笑)。前の先生からのこの指摘に、私はかなり傷ついていたんでしょうね。
自分の力に自信を失い、「やっぱり私なんて~」とやさぐれていた私には、いったいどうしてこんなに評価が違うのか、わけがわかりませんでした。自分としてはなにも変わっていないのですから。まったく、キツネにつままれた気分でした。
その後、著名な海外ミステリー翻訳者の田口俊樹氏がこう語っているのを目にしました。たしか、「自分のクラスでは鳴かず飛ばずだった生徒さんが他の講師のクラスに移ってからめきめきと頭角を現しはじめると、うれしいけれど一抹の寂しさも感じる」というような内容でした。講師によって評価が変わることは実際にあるのだと、そのとき納得しました。
私はクソ真面目で融通のきかない性格ですから、今思えば、周囲の人たちの言葉を真に受けすぎていたんですね。特に小説の翻訳となると、講師によって評価が異なるのも当たり前かもしれません。翻訳における「正解の幅」がおそらくほかの分野よりも広く、文体の好みなどに評価が左右されるケースもあるでしょう。
悩みすぎず、居場所を変えてみるのもいいよ。
今、かつての私と同じ悩みを抱えている学習者の方々に、ぜひともお伝えしたい。あなたの実力のせいじゃないかもしれない。努力しているけれど伸びが感じられない、まったく評価されない。そんなときは、クラスを変えてみる、担当講師を変えてみる、スクールを変わってみる、という選択肢もアリかもしれません。
もちろん、まずは実力をつける努力が必要です。それは間違いない。そこそこの実力があるはずなのに、評価があまりにも低い、という前提での話です。
でも長年勉強しているけれど成果につながらない、と感じるなら、自分の「居場所」を変えてみるのも手かもしれません。思わぬチャンスにつながることもあります。
実際、私自身、最後に東京で対面授業を受けた際に、先生から下訳のお仕事の話をいただきました。あのときは、大げさですが、天にも昇る心地でしたね。ほんとうにうれしかった。先生に感謝を。
翻訳学習者の方々が、ムダに悩んだり苦労したりすることなく、自分の道を歩んでいけますように
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