みなさん、誰かに嫉妬したことはありますか? 嫉妬というふうに表現するとなんだかどろどろした暗い情動といった印象がありますが、ただシンプルに「うらやましい!」という感情なら、私はいまもしょっちゅう抱いています(笑)。
嫉妬なんて恥ずかしい、惨めだと思いがちですが、メンタリストDaiGoさんの『自分を操り、不安をなくす 究極のマインドフルネス』を読んでみて、嫉妬の感情にも意外な利点があると気づきました。
私たち人間は、つい他人をやっかんでは相手を攻撃したくなったり、陰口をたたきたくなったりしがちです。でも、嫉妬心をうまく活用して、自分が前に進む力に変えていけるようにしたいものです。
メンタリストDaiGo「嫉妬は気づきの多い大切な感情」
嫉妬の感情にある利点とは、ずばり「自分の欲しいものが明確になる」ことだとDaiGoさんは述べています。
つまり、嫉妬の感情というのは、自分が欲しいものを、相手がもっているときに起こるということです。逆にいえば、相手が社会的成功やお金、派手なふるまいなどを見せつけてきたときに、もし嫉妬を感じたとしたら、それが自分の欲しいものだということです。
このように、自分がほんとうに欲しいものが明確になるのが、嫉妬の感情の利点です。
メンタリストDaiGo『自分を操り、不安をなくす 究極のマインドフルネス』(PHP研究所)
「嫉妬は気づきの多い大切な感情」。私にとって、嫉妬というのはネガティブな感情ですぐに打ち消したくなっていました。ですから、きちんと嫉妬と向きあったことはなかったんです。自分がほんとうに欲しいものを明確にしようとしたりしなかった。
たとえば、20代の頃には友人から彼氏や仕事の自慢をされたら、うらやましいと感じていました。つまり、当時は彼氏が欲しかったし仕事で成功したかったのだと思います。単純な話ですね。
でも、60歳になった私は自分の限界がよくわかっているので、仕事上のことではそんなに嫉妬心はかきたてられません。
独身で子供のいない私は、幸せそうな家族を見かけると「ああ、いいなあ」とは思います。でも、残念ながらもはや自分の家族を築ける年齢をとうに過ぎたこともあり、嫉妬したりはしません。年をとるのもよいものですね(笑)。
では、いまの私が何に嫉妬するのか?
たとえば、テレビ番組「住人十色~家の数だけある 家族のカタチ~」で紹介されている遊び心のあるユニークな住まいの持ち主については、うらやましくて仕方がないです。小さくても工夫を凝らした住宅、そこで楽しげに暮らす一家。理想の暮らしを実現した人たち。
でも、そこでよく考えてみたのですが、私がほんとうにうらやましいのは、家そのものや家族ではないのかもしれません。自分らしい快適な家や暮らしに憧れているので、その憧れを実現した人たち、なによりもその住人たちが生き生きと楽しそうに笑顔で暮らしている、その状態に羨望を抱いているのでしょう。
さらに言えば、私はなにしろのびのびと楽しく生きた覚えがないので(笑)、「自由に楽しく生きる」人々に嫉妬しているのかもしれませんね。
嫉妬の感情を受けとめて、上手に使うこと
さて、嫉妬の感情から自分の欲しいものがわかったら、そこからどうするか。
ここから、二つのルートがあります。
❶自分の嫉妬の感情から「自分に足りないものはこれだ」と気づき、それをきちんと受け入れてがんばるルート
❷「自分に何かが足りない」ことを受け入れるのが嫌で、怖くて受け入れるだけの強さをもっていないために、自分がほんとうに必要なものに対するモチベーションを捨ててしまうルート
メンタリストDaiGo『自分を操り、不安をなくす 究極のマインドフルネス』(PHP研究所)
❷のルートを選ぶのは愚かなことだとDaiGoさんは言います。自分が死ぬほど欲しい何かをもっている人を一生懸命否定することで「自分が欲しいものに価値はない」と、自分の夢を叩きこわして自分を正当化しようとすることだと。
「自分の夢を叩きこわす」というのは、悲しいことだと思います。嫉妬が原因ではなくても、弱い人間が一歩踏みだす勇気をもてず、「どうせ自分には無理だ」「こんなことやっても意味ない」などと自分に言い聞かせて「夢を叩きこわそうとする」のは珍しいことではないと思います。若い頃の私がまさにそうでした。
ちなみに、嫉妬の感情を認めるときには、できるだけ細かく、自分で明確に言葉にしてまとめるとよいそうです。相手のどこの部分に嫉妬を感じたのか。たとえば、その人がもっている家や車、高級時計など? それとも周囲の人間から賞賛されていること?
自分にどんな欲求があるのかということは、考えても意外と出てきません。だからこそ、それを明確化してくれる嫉妬の感情はとても大事なのです。
メンタリストDaiGo『自分を操り、不安をなくす 究極のマインドフルネス』(PHP研究所)
おまけ 嫉妬は「緑の目をした怪物」
さて、最後に嫉妬にまつわる名句をご紹介します。嫉妬心によって身を滅ぼした悲劇の英雄の物語といえば、シェイクスピアの『オセロー』。
O, beware, my lord, of jealousy!
It is the green-ey’d monster which doth mock
The meat it feeds on.
(Othello, Ⅲ. ⅲ. 165-67)
どうかお気をつけ下さい、嫉妬には。
あれは緑の目をした怪物で、餌食とする
人の心を弄(もてあそ)ぶものです。
(『オセロー』Ⅲ. ⅲ. 165-67)
♧イアーゴーは、オセローの心に嫉妬の疑いが生まれてきたのを見きわめると、「嫉妬」という語をあからさまにもちだして、それを確固とした既定の感情に仕立てあげていく。
meatは、現在は「肉」の意だが、当時あるいはそれ以前は、飲み物と対照する「食べ物」として用いられることが多かった。
外山滋比古 他編『英語名句辞典』(大修館書店)
嫉妬の感情は、うまく活用できれば、自分の欲しいものを明確にできます。そして自分自身を向上させるためのモチベーションにもなります。
でも、扱いを誤ると、この「緑の目をした怪物」に弄ばれ、身を滅ぼす羽目になるかも……。くれぐれも油断せず、心しておきたいものですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
よい一日をお過ごしくださいね。
コメント