出版翻訳家になりたいけれど、具体的にどうすればよいのかわからない……。勉強をしているけれど、どうやって仕事につなげていけば……。
そんな悩みを解決する一助となることを願って、今回は翻訳スクールについて私の経験談をお話しします。
翻訳者ネットワーク「アメリア」からリーディングの仕事を初めて獲得した件については、下記をご覧ください。
翻訳者を目指す場合、通信・通学講座のメリット
まずは私自身の経験から、翻訳スクールをお勧めする理由をお話しします。
独学でもある程度まで翻訳を学べることは間違いありません。しかし、どこかで行き詰ってしまう可能性が高いです。何を勉強するにせよ、やはりその道のプロから指導を受け、ライバルとともに切磋琢磨するほうが効率よく実力アップにつながるはずです。
出版翻訳において、スクールで学ぶ利点を3つ挙げます。
客観的な評価を受けられる
独学していると、独り善がりな訳になることがあります。訳すのも、訳文を読んで評価するのも自分自身だからです。
翻訳のプロである講師に訳文を添削してもらうと、思わぬ箇所で厳しい指摘を受けることもあります。「我ながらなかなかええ表現やん!」なんて自分でひとり悦に入っていた箇所にかぎってダメ出しを食らうことも。
最初のうちはかなりへこむと思いますが、とにかく勉強を継続することが大事です。プロの出版翻訳者になってからも編集者や校正者からいろいろ指摘を受けますし、最終的には読者にとにかく本を楽しんでもらえるように仕上げる必要があるわけですから、すべて勉強だと思って、心折れることなくやっていきましょう。
自分の課題や改善点がはっきりする
講師から添削や講評を受け取ると、自分の訳文のどこが、なぜよくないのかが一目瞭然となります。真っ赤になった訳文を見るのはつらいですが、やはり慣れていくしかありません。なにしろ実力をアップさせるためですから。
独学では訳文のどこをどう直せばよいかわからず、いや、むしろこれで上出来だと自分で思いこんでいたかもしれません。私もかつてはそうでした。根拠のない自信があって、そこそこいけてると勘違いしてしまう。だから講師から指摘されても、「えっ、なんであかんの?」とっさに反発したくなる。
でも、経験者として言わせてもらうと、それは絶対にダメです。講師の評価やアドバイスを素直に聞いて改善していく。その姿勢が大事です。
ただし、後述しますが、そもそもの講師選びで失敗していることもあり、その場合は事情が違ってきますが。
プロとして仕事をするうえでの各種アドバイスをもらえる
スクールで学ぶ利点は、翻訳の実力アップのみではありません。プロの翻訳家から貴重な経験談を聞く絶好の機会でもあります。
生徒である自分にとっては未知の、出版翻訳の仕事について、業界の実情を教えてもらえるのです。仕事の流れや獲得方法、編集者さんとのやりとり、分野選びのコツなどなど。実際に仕事をする際には、きっとかなり役立つはずです。
翻訳のプロとして活躍してらっしゃる先生方のお話は、なによりシンプルに楽しい、面白いということもありますね。
課題の内容はもちろん、翻訳や英語のこと、日頃疑問に感じていたことを講師になんでも質問できるのもありがたいですよね。
通信講座で下訳のチャンスをつかむまで
私自身の経験をざっくりお話しすると、
地元の翻訳スクール(まったく目が出ずあきらめる)➡ 東京の翻訳専門校の通信講座(下訳のチャンスをつかむ)
というパターンでした。どちらも数年や数回にわたって受講していました。
どうすれば実力をアップさせ、仕事につなげられるのか。悩んだすえに選んだスクールが「翻訳専門校フェロー・アカデミー」でした。
大阪在住なので通信講座一択(もちろん、新幹線などで通学講座に通う猛者もいるとはうかがいましたが)。当時すでにノンフィクションの訳書などもありましたから、出版翻訳コース上級の「マスターコース」にチャレンジすることに。
決め手となったのは、なによりも憧れの翻訳家が担当する講座があったからです。しかも「ホラー、ファンタジー」という私の好きな分野でした。
選抜試験はありますし、受講料も安くはありませんが、現役で活躍中の翻訳家から直接添削やアドバイスを受けられるので、私個人の感想ではこれまで受けたどんな講座よりも勉強になりました。
メリットとして、成績優秀者は翻訳者ネットワーク「アメリア」のクラウン会員に推薦されます。
スクーリングも1回あり、東京のフェロー・アカデミーで実際に授業を受けることができます。私の場合は、そこで講師の先生から下訳のお話をいただくことができました。
現在、フィクションの分野では、マスターコース「コージーミステリー」が10月から開講される予定のようです。詳しくはこちら
スクール選びはもちろん、講師選びも大切
さて、自分の目標や目的、予算に応じた最適なスクールを選ぶことが重要なのはもちろんですが、あわせて、どんな講師が担当するのか、という点にも注目してください。
私自身以前はそこまで念頭になく漠然と受講していましたが、特に出版翻訳の勉強においてはどんな講師に学ぶのかによって大きな違いが生まれると思います。小説の翻訳という性質上、講師によって評価が180度変わることもあるからです。
自分にとって目指す分野の憧れの翻訳家がいて講座を担当している場合、ぜひその講座を受講してください。それが一番です。
憧れの翻訳家がいない場合、ひとつの基準として、私個人の経験から指針をお伝えします。
おそらくどの翻訳スクールもある程度同じだと思うのですが、講師は、「いままさに現役バリバリで活躍中」か「ベテランで翻訳経験は豊富だが現在はあまり実務に携わっていない」の2タイプに分かれると思います。
あくまで私が長年英語講師業や翻訳の仕事に携わってきて抱いた個人的な感想ではありますので、その旨ご了承くださいね。
現役で活躍中タイプの講師のメリット・デメリット
ベテランで現在はほぼ講師専業タイプの講師のメリット・デメリット
あくまで私の考えですが、「基本的な翻訳技術をしっかり学ぶならベテラン講師専業タイプ」、「仕事の獲得を視野に入れて実力アップを狙うなら現役活躍中タイプ」がそれぞれお勧めかと思います。
もちろん、講師との相性もありますから、そのあたりも考慮すべきでしょう。ただ、実際に指導を受けてみないとわからない点も多いので、「とりあえずこの先生からはこういう点をしっかり学ぼう」という割り切りも必要かと。そしてやはりどうしても合わないと判断したら、長期的には担当講師を変更することも視野に入れるとよいでしょう。
自分にとって最適な学び方を選んでいこう
私自身、試行錯誤しながら、ときには失敗もしつつ、勉強を続けてきました。いまこうしてあとから振り返っているからこそ言えることも多いです。
出版翻訳を目指して学習中の方、仕事獲得に向けて努力している方にとって、今回の情報が少しでもお役に立てば幸いです。
次回は“コンテスト・トライアル編”をお伝えする予定です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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