出版翻訳家になるには ~私の経験を振り返って(上)リーディングから翻訳へ~

出版翻訳家になるには 私の経験談(上)

出版翻訳家になりたいけれど、具体的にどうすればよいのかわからない……。勉強をしているけれど、どうやって仕事につなげていけば……。

私も昔そうでした。そこで自分の経験を振り返って、みなさんにお伝えしたいと思います。少しでも参考になれば幸いです。

*今回のお話は、20年ほど前にさかのぼることになりますし、あくまで個人の経験談ですので、現在の実情にそぐわない点もあるかもしれません。その旨、ご了承ください。

目次

最初のきっかけは、翻訳者ネットワーク「アメリア」を通してリーディングの仕事

ブルーのタイルの背景に開かれた洋書の画像

すでにほかの記事でも少しお伝えしていますが、私は20代の頃から通信教育などで小説の翻訳を勉強していました。出版翻訳家になりたいという夢があったからです。でも当時は「いつかなれたらな~」という淡い夢でしかありませんでした。

離婚後、30代初めで「これではダメだ」と思い直して、地元の翻訳学校に通い始めましたが、講師からはまったく評価されず、さんざんな目にあってすっかりやる気をなくしてしまいました。

そのあたりのお話は下記に詳しくお伝えしていますので、ご興味があればぜひお読みください。

そんな私が出版翻訳への足がかりとなるリーディング(概要作成)の仕事をゲットしたのは、翻訳者ネットワーク「アメリア」からの紹介がきっかけでした。

当時、本業のかたわら、すでにアメリアに入会し、「定例トライアル」を積極的に受けていました。

アメリアの「定例トライアル」は、<実務><出版><映像>など10分野で毎月開催される翻訳の模擬試験

アメリアには、「定例トライアル」でAAを1回取得、または同分野で12ヶ月以内にAを2回取得すれば、「実際の仕事で通用するレベル」の証明として「クラウン会員」という資格が与えられます。この資格があれば、実務経験の不足を補うことができ、仕事のチャンスにつながるのです。

「クラウン会員」資格の取得条件 (いずれか一つ)

  • 「定例トライアル」でAAを1回取得、または同分野で12ヶ月以内にAを2回取得
  • 「翻訳トライアスロン」で96点以上を取得
  • 翻訳の専門校フェロー・アカデミー対象講座の講師推薦

「アメリア」について詳しくはこちら

現在はおそらくサイトの求人情報のみでしょうが、当時はアメリア事務局から直接リーディングの依頼がありました。私の場合、定例トライアルのノンフィクションの分野で幸運にも何度かA評価をもらい、そこからリーディングの依頼につながったようです。

リーディングの仕事経験がなかった私のために、参考資料なども事務局側で用意してくれました。

リーディングから翻訳の仕事へ

パステルカラーのタイルの背景に開かれた本の画像

アメリア事務局からは、フィクションなら文芸、ロマンス、ミステリー、ファンタジー、ノンフィクションならビジネス、経済、サイエンスなど、ジャンルを問わず多くのリーディングを依頼されました。

リーディングの報酬は基本的に低い(最近ではおそらく1~2万円程度)のですが、一冊の原書をきっちり読んで概要をまとめるという仕事は、翻訳者の卵にとってとてもよい訓練になります。もちろん締め切りがあるのでけっこうきつい作業ですが、なにより面白い新刊を読む機会をもらえて、楽しかったですね。

リーディングの経験を積むうちに、アメリア事務局からの紹介で、大手出版社から直接リーディングの依頼を受けるようになりました。

さらに別の出版社からは実用書の翻訳を依頼されることに。初めての出版翻訳のお仕事でした。報酬は一冊訳していくらという買い切り方式でした。関節炎やリウマチに関する書籍で、最終的には医師の監修者がついたのですが、調べ物がかなり大変だったおぼえがあります。

やはり人脈や経験が大事ということでしょうか。リーディングの仕事を1年ほどコンスタントにこなすことで出版社や担当編集者から信頼を得られたのだと思います。

翻訳者の卵にとって、リーディングの仕事はとても大切。編集者からの信頼を得るきっかけになる。楽しみながらしっかり取り組めば、きっと自分にとって大きな財産に。

占い本の翻訳者募集に応募、ついに合格!!

パステルカラーの模様と開かれた洋書の画像

ようやく出版翻訳家への一歩を踏み出せたうれしさもありましたが、一方では、実用書のみならず小説などエンタメ系の翻訳に携わりたいという夢も捨てきれませんでした。

アメリアには「翻訳トライアスロン」という過酷な?イベントがあります。

「翻訳トライアスロン」は翻訳をトライアスロンに見立て、出版・映像・実務の3種目で総合翻訳力を競うイベント

このトライアスロンにも何度も応募したのですが、あいにく出版(小説)の成績のほうが映像や実務よりもふるわないという不本意な結果ばかり。私にとっては、出版翻訳のハードルの高さをひしひしと思い知らされるだけでした。

そんななか、たしかアメリアからの告知メールだったと思いますが、大手出版社による占い本の翻訳者募集があるとわかったんです。これまで翻訳コンテストなどすべて不合格ばかりでしたが、とにかくチャレンジしてみることに。

それがまさかの合格で、占い本の翻訳者に選ばれたのです。私にとって初めての合格でした。

ひとつだけ今までと違い、工夫したのは、トライアルにあたって翻訳スタイルを変えたことでした。それまではとにかく無難に、ミスなく訳そうとして、おそらくよくも悪くもない翻訳でしかなかったのでしょう。ところがその本は正統派の占い本ではなく、ちょっと辛辣でユーモアたっぷりの本だったので、トライアルでは自分としてはちょっとやり過ぎかなというくらいの、やや大胆な翻訳に仕上げていました。

トライアルやコンテストでは、その趣旨や対象となる課題の内容に応じて自分の翻訳スタイルを変えてみよう。効果が期待できるかも。

翻訳の世界は甘くなかったけれど、そこから縁も……

パステルカラーの背景に積み上げられた本の画像

ようやく翻訳者募集のトライアルに初めて合格し、出版翻訳の、しかも念願のエンタメ系の仕事を獲得できたのですが……この世界はやはり甘くなかったのです。

辛口で毒舌たっぷりの占い本を日本語の読み物として仕上げるのは、新人の私にとってなかなか苦労があって大変でした。それでもなんとか仕上げてほっとしていたところに担当編集者さんから連絡が入ったのです。

結局のところ、私は下訳者扱いとなり、私の名前は翻訳者として書籍には記載されない、という話でした。そもそもその分野で有名な方が監修者が入る予定だったのですが、その人のお抱えライターさんが私の下訳に手を入れて仕上げ、「~氏監訳」という形式の書籍になるのだと。

翻訳者に選ばれたはずが、あっという間に下訳者になっちゃっていたのです(笑)。著名な監訳者の名前が出るほうが売れるにきまっていますから、仕方のない話ですよね。占い専門のライターさんが書き直したほうが読みやすいでしょうし。完敗でした。

こうして念願のエンタメ系の翻訳家デビューは露と消えたのでした……。

とはいえ、捨てる神あれば拾う神あり。のちに私を気の毒に思った編集者さんが他の編集者さんに紹介してくださって、小説風の自己啓発本を翻訳するチャンスをいただきました。

くさらずにがんばっていると、チャンスにも恵まれるものですね。いや、かなりくさっていたかもですが……(笑)。

意図せぬ結果に終わったとしても次のチャンスにつながることも。くさらずに前向きに努力していこう。人脈こそ大事。

ちょっと思い出話みたいになってしまったかも……。でも、こういう形で試行錯誤しながら希望分野の仕事に近づいていった、というご参考になれば幸いです。次回は“スクール編”をお伝えする予定です。

さいごに。

翻訳者ネットワーク「アメリア」は翻訳の実力アップから求人情報や各種サポートなど、翻訳者を目指す方はもちろん翻訳者としてすでに活躍中の方にとっても入会するメリットが多々あります。

私自身もトライアルやコンテストの参加から仕事の受注まで活用してきました。掲載された求人情報から実用書のリーディングの仕事を獲得したこともありました。

ただし、下記の通り、入会については一定の費用がかかりますので、ご自分の予算や計画に応じてご検討くださいね。また割引キャンペーンなどが実施されている場合があるので、その時期を狙うのがお勧めです。

入会金:5,500円 (税込) + 年会費:16,500円 (税込) = 合計:22,000円 (税込)
定例トライアル応募料1,650円(税込)/ 1回
翻訳トライアスロン応募料3,300円(税込)  
*2023年6月調べ

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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